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1 <h1>照明は(あんまり)いらない</h1> 2 <h2>照明のない生活</h2> 3 <p>僕は長らく照明をほぼ使わない生活をしている。学生の頃節約にはまり、出費をあれこれ見直していると、部屋の天井であたりまえのように光り輝いている電灯が目についた。もともと不眠症ということもあり、電灯を消したほうがいいのではないかと、しばらく使わない生活をしてみた。といっても夜は真っ暗になるので、たまたま棚の奥で暇そうにしていたハリケーンランタンを引っ張り出して久々に灯した。やっぱりこっちの方が雰囲気もあっていい。ということでしばらく電灯を使わない生活をしていると、悩みの種だった不眠症は嘘のように無くなった。すごく寝付きがいいのだ。</p> 4 <p>就職先が決まり引越した時も、新居の天井には何も付けないで置いた。この家では台所の換気扇に暖色の豆電球が付いていたので夜はこれを使うことにした。</p> 5 <p>仕事を辞めて実家に帰って来てThinkPad X220を買ったので、ウェブカメラの横についているThinkLightを使っている。本当はランタンを使いたいのだが、同居人に臭いと言われるので控えている。リビングに居てはこれまた同居人がいるので真っ暗にはさせてもらえない。</p> 6 7 <h2>変化</h2> 8 <p>こんな経緯でもう何年か照明を控えた生活をしている。すると身体にはいろいろと変化があるものである。ひとつ目は既に書いたが、寝付きがよくなったことである。セロトニンだかメラトニンだか知らないがやはり身体が夜を検知しているようだ。ふたつ目は暗くても物が見えるようになったことである。慣れれば見えるのだ。あるいは視力だけでなく、どこに何を置いたのかよく記憶しているのかも知れない。文明が身体を蝕んでいる証拠でもあろう。みっつめは世の中がまぶしくて仕方がなくなったことである。どうしてこうも電灯を点けて喜んでいるのか。</p> 9 <p>天井に電灯があり、昼も夜も灯すのが当然となっている。どうしてこうなったのか。昼は天気の善し悪しを観じ、夜は月の満ち欠けを知る。電灯は世界とのこの一体感を我々から奪ってしまった。宇宙の波動を全身で受けずして身体が整うはずがない。不眠症患者は睡眠薬を飲む前にすることがいくらでもあろう。</p> 10 <p>古来人間は暗い夜を火の灯りだけで生活して来た。日本の家においては昼間も薄暗いものだった。夜暗くて物が見えないのではなく、日頃不必要に明るくしているから見えないのである。便利は人間を軟弱にする。</p> 11 <p>ところで世の中はどうしてこうも明るいのか。スーパーもコンビニもしんどい。ドラッグストアは近付くことも憚られる。電気が足りぬと言う前に使い方を考えたらいいものを。そして夜は明るさが正義とばかりに街灯を立て、空から光を奪っている。</p> 12 13 <h2>おわりに</h2> 14 <p>節約にもなるしゆったりした時間を過ごせるので電気消してみんかい?</p>